• イヌワシの保護活動とワシ羽矢

    悪い事は重なる。イルクーツク空港に着きトランクが最後まで出て来ない。原因が解らない、空港スタッフに何度も説明を求めたが「出て来ないのはイルクーツク空港の責任ではない。」と言うだけだった。

    ホテルに行き通訳をようやく見つけた。翌朝8:00空港に通訳と一緒に行く。昨日とまったく同じ対応で、イルクーツク空港の責任は一切無いの繰り返し。通訳までが「トランクは出て来ない。出てくれば受け取れます。出て来ないのはヤクーツクの責任です。」と埒が明かない。私の胸ポケットにはモンゴルの首都ウランバートル迄のチケット、その他の携帯品は小銭少々とリールの無い釣竿5本だけ。「最後に帰国時、成田空港に寄る、解るように連絡して下さい。」と空港長に言い、諦めて午後の便でモンゴルに向かった。

    モンゴル国首都ウランバートル空港に着く、タクシーでマンホ―ハイホテルに行きオ―ナーに会いたいと面会を求める。ホテルのフロントは「オーナーはゴビ砂漠に行った、いつもは4~5日で帰って来るがわからない。」オーナーに会いたいと言い、ホテルに泊まる。翌朝フロントに行き昨日フロントに連絡をお願いしたと伝えると「聞いて無い、彼は非番で明日まで休みです。」との回答、オーナー探しは空振に終わる。フロントで市内の電話帳を借り(株)ジャモトーホー社名を探す。それらしき名を3件見つけた。電話を上から順番に掛けてみると1件目電話に出ない。2件目女性の声でチンプンカン。

    3件目聞きなれた声が出る「サツラルトさん」「寺内さん声が近いです東京ですか?」「マンホウハイです、来て下さい」電話の後30分程でホテルに来てくれた。サツラルドさんに旅行トランク紛失の事情を話し、日本帰国の旅費とモンゴル滞在費用を貸して下さいとお願いした。快くOKしてくださり一安心、リールの無い竿5本をプレゼントする。

    「鳥類学者モンゴル大学前学長シャグダール先生を呼び昼食を食べましょう。」サツラルドさんが誘ってくれた。そういえば昨夕から何も食べてい無い、まるで私は準漂流民みたいだと思った。

    昼食時、シャグダール前学長が来てくれた。彼はモスクワ大学留学後自国にて鳥類研究所を創設、初代所長就任等世界的な鳥類学者としてモンゴル大学長になった。シャグダール前学長は「モンゴル国が世界中で1番鷲の飼育に適している。イヌワシ.オジロワシ.イソワシ.草原鷲.鶴と何でもいる。遊牧民はとても貧しいです、遊牧民を応援して下さい。」と語った。私は意を決して「鷲は神様で鳥葬も有ったと聞いています。」「そうです神様です」「その鷲を育成し羽根をお金にしても良いのでしょうか。」と聞くと、前学長は答えた「鷲は神様…お金はもっと神様です。モンゴル国の西国境アルタイ山脈にカザフ民族の遊牧民がおり鷹匠文化を有しております。その活用も検討して下さい、お願いします。」

    私はその日サツラルト社長にイヌワシ.イソワシ.草原鷲の収集をお願いした。社長から成田迄のチケット代を借りた。奥さんのからカシミヤのセーターのプレゼントが有った。

    成田空港に着きロシア航空成田事務所を訪ねた。所長との面会を申し入れると暫くお待ち下さいと言われた。暫くしてメモを持って出て来た。「お待ちして居ました。スーツケースはモスクワで見つかりました。今モスクワ空港で保管しています。」石狩に転送下さいと名刺を渡す。半月後、花川の自宅に鉛タグで厳重に封印され中身無傷でリール.とキャビアが入ったまま送料無料で石狩に届いた。翌年私はヤクーツクにモスクワ経由で向かった。