古瑞渓の硯
1979年11月、中国の天津市を訪問した。天津市の羽球工場内に日本弓道の矢羽製作工場設立の仮契約を行うためです。仮契約は予定通り締結した。工場敷地内に仮設した弓道場と天安門広場、そして万里の長城の三か所で弓道の演武を行った。久しぶりに引いた。
演武の打合せの時、中国要人に貴賓室に案内された。通訳は呂志乾先生だ。掛け軸が壁一面に下げられ、螺鈿(ラデン)のテーブルに硯が多数飾られていた。「贈呈するので気に入った品を選んでください。」私は持ち帰るとき重いので一番小さい硯を指すと呂先生は「掛け軸と硯はもっと大きな品が良い」と言った。掛け軸はトランクに入れると長いので邪魔になってしまう。
華国鋒主席の贈呈目録を書いていただいたので、私の詩吟の先生にお土産にすれば丁度良い。
訪問の目的を終え帰国した。先生にお土産の硯を渡すと一目で「古瑞渓です」と感激された。大きい硯と掛け軸を持って帰らなかったが、次回行った時に貰えば良い。