• イヌワシの保護活動とワシ羽矢

    サハ訪問

    モスクワ大学にて短期留学を終えヤクーツクに向かいました。

    ヤクート空港にアレクセーエフ大臣とナゴビーチンスポーツ大臣ペーチャ大統領報道官が待っていました。翌日午前大臣室でイヌワシ飼育の調印資料をお互いに確認した。昼食を挟んだ後、調印式が始まった。正面に大臣が座り右側に私と通訳、その向いに現地代表と次官ら数人が並んだ。大臣の挨拶に続き事務官が経緯を報告し自由発言になった時、二人の民族代表が手を上げた。最初に長老と思われる代表から「サハ.ヤクーツクにはマンモスと鷲の二つの神が居てマンモスは氷の地下から、鷲は空から地上の全てを見守っている。その鷲を閉じ込め飼育してお金に替えるとは許される事ではない」

    次の代表から「二つの神に守られて平和な生活が出来ている」この事は日本では許されてもサハでは絶対許される事では無い。大臣が「私は日本に行き鷲の施設も見て来た。保護育成した鷲は決して殺さない。毎年抜け落ちた羽根のみ日本弓道の矢に加工しスポーツとして文化を守る主要な役割を果たしている。寺内氏を調印の為に呼んだ、前に説明した。今日はその為にサハ迄きてくれた。」

    「神様を捕えてお金儲けにする最も恥ずべき事」絶対反対。

    「もしそんな事をしたら火をつけて阻止をする」絶対反対。

    私は大臣の横に屈んで背広の裾を引き通訳と二人で「今日は調印を止めましょう。良く話し合って下さい。理解された時点で連絡下さい」と言って大臣室を後にした。

    ロシアでの鷲飼育の夢はシベリアの氷の中に閉ざされた。

    ふと前に見た「オロシャ国粋夢譚」映画が頭に浮かんだ。緒形拳.西田敏行両主演の200年前のロシア漂流民の物語だ。凍傷で足を切断した西田敏行氏が日本に帰る光太夫(緒形拳氏)と別れるシーンを思い出した。封切りの時この映画を札幌見た。2回目は極東会議一員として招待を受けイルクーツクの劇場で観た。エカテリーナ女王の脚に縋き帰国を願う光太夫の場面で上演中に拍手と口笛、ブラボーの声が沸き上がり上映が終了。劇場内が明るくなると極東会議で招待された日本人が最前列、あとはロシア人拍手が修まり再上映迄相当時間を要した。日本はバブルの最盛期ロシアは不況でソ連崩壊の直前でした。

    ヤクート空港で帰りのモスクワ行きチケットをキャンセルしイルクーツク空港行きに切り替えた。釣りをしたかった。しかし悪い事は重なる。イルクーツク空港でヤクーツクで預けたトランクが出て来ない。何度も確認問い合わせたが出てこない。原因が分からない。ヤクーツク空港で預けたのだからイルクーツク空港の責任で無いと埒が明かない。一旦ホテルに行き通訳を探した。

    調印が無事終わったらヤクーツク→モスクワ→成田経由で日本に帰国する予定でしたが、予定変更ヤクーツク→イルクーツク→モンゴル国の首都ウランバートルに行くことにしました。